ウンチが出にくくなる「会陰ヘルニア」という病気

「会陰ヘルニア」とは、お尻の筋肉の一部に穴が開き、そこから直腸が脱出して便が出にくくなる病気です。

このワンちゃんは、うちの病院に来院される前に2件の病院に行かれたそうですが、手術が難しいと断られたとのこと。
再発しやすい病気だし、大きな手術になりますが、便が出ずにずっと排便しようと力んでばかりで、とてもワンちゃんには辛い病気です。
飼い主さんと相談した結果、うちの病院で手術させていただくことになりました。


うちの病院では去年開業して以来、4件の「会陰ヘルニア」の手術をさせていただきました。ただ、その3件はみんな小型犬でした。
今回は20kg近いワンちゃんなので手術も長時間になることが予想されました。
たいていの手術は午前と午後の診察時間の間に行っているのですが、今回は午後休診になる祝日の午後に手術を行いました。




手術前の状態  腸が飛び出しているため、皮膚の下がかなり膨らんでいます。



この病気は、男性ホルモンの影響で発症してしまうことが多いため、まず1つ目の手術として再発予防のために去勢手術を行いました。



さらに2つ目の手術として、お腹の中で直腸を腹筋に縫い付けて固定しました。
また、膀胱や前立腺も脱出してしまうこともあるため、精管(前立腺と精巣を繋ぐ管)も腹壁に縫い付けました。




そして、メインのヘルニアの部分の手術です。
空いてしまった穴は、周囲の筋肉を溶けない糸で縫合して閉じ、皮膚も縫合して手術終了です。




今回はもっとも再発しにくいと言われている、直腸固定を併用した術式を選択したので、3つの手術を連続で行いまいた。
麻酔時間と手術時間とをあわせると3時間以上の手術になりましたが、ワンちゃんもがんばってくれて無事に手術を終えることができました。

今回の「会陰ヘルニア」をはじめ、「前立腺肥大」「肛門周囲腺腫」など男性ホルモンの関係した病気は多いです。
病気になってからだと、辛く痛い思いをしなくてはいけません。
若いうちに去勢手術を受けて、男性ホルモンを減らしこれらの病気を予防してあげることで、より長生きにつながると思います。