オトスコープ(耳内視鏡)による新しい耳の治療 1

オトスコープ(耳内視鏡)を使用することによって、耳道内が鮮明に観察でき、通常の耳鏡ではほとんど観察できなかった鼓膜も容易に確認できるようになりました。

オトスコープは観察するだけの検査器具ではなく操作をする穴があり、そこからカテーテルや鉗子(かんし)などを挿入することで、耳道洗浄や異物、耳垢の除去が可能です。


オトスコープで観察した鼓膜




外耳炎のワンちゃんの耳の中(動画)


この動画のワンちゃんは、「綿棒で掃除をしながら点耳薬をしていたが治らない」と言う事で転院されて来られた子の耳を、オトスコープで観察したものです。

綿棒で掃除をすることで耳垢を奥に押し込んでしまい、耳の奥で「耳垢のによる耳栓」が形成され、点耳薬が奥まで入っていなかったため改善しませんでした。



「外耳炎」は耳に起こる炎症であり、「耳を振る」「痒がる」「耳が匂う」などの症状を引き起こします。

動物病院に来院される病気で一番多いのが「外耳炎」だと言われています。

軽度の外耳炎は投薬だけで治まりますが、難治性の場合は鼓膜が破れて中耳炎・内耳炎まで引き起こしてしまいます。

難治性の外耳炎や中耳炎では、手術で耳の穴を全て摘出しないと治らない場合もあります。

ただ、この手術を行うには以下の問題点があります。

・病変の広がりなどをしっかり調べるためには、CTやMRIなどの高度画像診断が必要であり、また難易度の高い手術となるため、大きな病院で検査・手術する必要がある
・顔面神経麻痺や手術後の化膿などの手術後の合併症の多さ
・施設によりますが、数十万円(両耳だと100万前後かかることも)の手術費用


このような大変な手術をできるだけ回避するために、当院ではオトスコープと呼ばれる「耳内視鏡」を用いた治療を行っております。



当院のオトスコープ


スコープは動物専用に開発されたもので、動物の耳の形に合うような形状で、先端が樹脂に覆われており耳道を傷つけにくくなっています。

CCDカメラはオリンパス社のものを主に用いており、サブでSTORZ社のものも使用しています。


モニターは、消化器内視鏡で使用している大型モニターに出力しており、処置の静止画・動画はパソコンで保存・管理しております。


次回、実際の治療方法についてご紹介いたします。